顎変形症を改善する外科矯正
外科矯正とは通常の矯正治療だけでは治すことができない顎変形症(著しく咬み合わせが悪い、顎が変形している)などの場合に、顎の骨を外科的な手術で切って動かす処置のことです。
かなり本格的な手術が必要となりますが、大きな効果が
期待できます。
当院ではサージェリーファースト・アプローチを導入しています
通常外科矯正とは、手術前に矯正治療(術前矯正)をし、その後外科手術を行います。しかし、それでは治療が
長期間になることが懸念されていました。
そこで当院では術前矯正を行わずに外科処置を行う、
「サージェリーファースト・アプローチ」という新しい
方法を導入しました。
そもそもなぜ、術前矯正が必要だったのか
-
矯正前の歯並びのまま外科処置を行っても、手術後の歯並びはうまく咬み合いません。
かつてはこの咬み合わせが安定しないと、せっかく手術した骨がズレてしまう可能性が
ありました。そこで手術後に歯がしっかり咬める歯並びを、手術前の矯正で作っておく必要が
あったわけです。 - 術前矯正終了後、上下の歯のずれを確認し、顎の移動量などを計算したうえで顔のバランスを
考慮し、手術計画を立てます。
これをもとに顎の位置を決める装置を作成後に手術を行います。つまり従来の方法では、
術前矯正が完了せずに、手術を行うことは難しいということになります。
*1:初診の段階で、まず手術後に良い咬み合わせとなるような歯列を計画し、それに向けて術前矯正を
行ないます。
このため、最初に咬めていた状態からだんだんと咬み合わせが悪くなっていきます。
また、唇や顎の形も悪化していき、手術直前が最も悪い状態となります。
*2:1~2年の術前矯正が終了した段階で手術を行ないます。ここで一気に咬み合わせと顔貌が改善します。
*3:術後にも歯並びの微調整が必要で、数か月の矯正を行ない、治療が終了します。
なぜサージェリーファーストでは術前矯正が不要なのか
骨の固定性は、骨と相性の良いチタンプレートが登場したことや、術式の大幅な改良により、段違いに
向上しました。そのため手術後に顎を固定するために、従来では針金で上下の歯をくくっていましたが、柔らかいゴムに変更する医院が増えております。
また、顎の固定期間も2週間前後に短縮されている動きが見えてきています。その結果、骨の固定性が向上することで、術後の骨がずれるリスクが大きく減少したということになります。
サージェリーファーストは、切って固定した骨がずれないことが大前提となりますが、術後間もない
不安定な咬み合わせに左右されない、強固なプレートが登場したことにより骨を確実に固定することが
可能となり初めて実現しました。
サージェリーファーストのメリット
すでに台湾や韓国などの、骨切り施設では5,000以上の症例が実施され、従来の術前矯正を行う方法と
比べ、最終的な仕上がりに差がないことが実証されています。また、矯正による歯の動くスピードが、
従来に比べてとても速いことも特徴の一つとして挙げられます。
メリットばかりあるように見えますが、実際に行うにはいくつかの条件をクリアしないと良い結果が
得られません。場合によっては後遺症が残ることもあるため、病院側の正確な診査診断と手術計画、
それに加えて確かな治療技術が必要不可欠になります。
矯正期間の短縮
手術後はほとんど咬めない状態になりますが、歯には元々咬み合わせが安定する方向に動こうとする性質があります。矯正装置装着後、少しずつ歯が咬み合うようになってくると、それに合わせて歯が自然と
動き始めます。矯正装置がその動きを補助するような力を加えていくため、無理なく早い治療が可能に
なります。
術前矯正による見た目の悪化がない
受け口を手術で治すとき、従来では術前矯正中に一旦受け口を悪化させる方向に歯を動かします。
このため、長い術前矯正期間では受け口が悪化し、見た目が次第に悪くなりますが、
サージェリーファーストではこのようなことは起こりません。
治療の序盤に見た目が変化する
最初の手術で、顎をバランスの取れた位置に移動するため、顔の輪郭などの見た目が最初に変化します。
サージェリーファーストのデメリット
実施する病院に技術と経験が必須
近年発達した方法のため、手術と矯正の両方で一定レベルの技術と経験が必要となります。
そのため、どこの病院でも受けられる治療法ではありません。
保険が効きません
2015年春の時点では保険が適応されていない治療法です。
そのため、手術と矯正治療の両方が自費診療となります。
狭い来院間隔での矯正治療が必要
手術直後は不安定な咬み合わせになります、そのためドクターから指示された間隔で、
歯の調整を行っていただく必要があります。治療の間隔が大きく空きますと、良い咬みあわせを
作ることが難しくなります。